【第41回】変形性膝関節症の原因と痛みを取る方法

【第41回】変形性膝関節症の原因と痛みを取る方法

1. 変形性膝関節症について

次の5項目の中で該当する症状はありますか?一つでも症状が該当すれば変形性膝関節症の可能性があります
・歩き始めるときに痛みがある
・立ち上がるときに痛みがある
・階段の上り下りで痛みがある
・正座をするときに痛みがある
・ひざの内側を押すと痛みがある
変形性膝関節症は、肥満・年齢・遺伝子が関与するとされ、その他、化膿性関節炎やリウマチなどの炎症性疾患や骨折・靱帯損傷・半月板損傷などの外傷が関節の変形・変性に関与すると言われています。

2. 膝関節痛の原因

膝関節痛の原因は、第一に炎症です。 軟骨の過剰な負担によって軟骨が摩耗します。軟骨や骨のかけらなどの分解物により滑膜に炎症を起こし、膝の腫れや痛みの原因となり、さらに軟骨が摩耗します。

3. 変形性膝関節症の痛みを取る方法

主な治療法として、生活指導、運動療法、サポーターなどの装具療法、投薬・関節内注射などの薬物療法、手術療法などがあります。

生活指導

生活指導としては、
1)正座を避ける
2)肥満があれば減量する
3)エアコンによる冷やしすぎなどを避けて、膝を温めて血行を良くする
4)洋式トイレを使用する
などがあります。

運動療法

運動療法では、
1)筋力をつけて関節のぐらつきを軽減して膝の負担を減らす
2)減量して肥満による関節への負担を減らす
3)運動により軟骨細胞の新陳代謝を改善し軟骨の再生を促す
という目的があります。
膝の曲げ伸ばしや、膝に体重など負荷をかけること自体が膝の炎症、膝の痛みを誘発する可能性があります。
そこで、運動療法の基本は膝の曲げ伸ばしをせず、体重負荷も出来るだけ減らした状態で、スライド下の写真の様に膝周囲の筋力強化を行うことが推奨されています。
この写真では、主に膝を伸ばすことによって大腿の前面にある大腿四頭筋を鍛えています。

装具療法

装具療法では、O脚に対応するための足底板や、膝周囲の筋力低下に対応した膝装具、体重の負担を減らすための杖などの指示装具などがあります。

代表的な手術療法

手術療法では、すべての関節面を金属に置き換える人工膝関節全置換術、関節の内側もしくは外側のみを金属に置き換える人工膝関節単顆置換術、ひざ下の骨のひとつである脛骨をくさび状に切ってO脚を直す高位脛骨骨キリ術、関節内にはがれた軟骨や骨を摘出したり、腫れてふくらんだ関節の袋(関節包)を削る鏡視下手術を行っています。

4. 再生医療 PRP(多血小板血漿)

さて、ここからは医誠会病院でも近日中に開始予定の再生医療、PRP療法に関して、少しお話させて頂きます。
PRP、多血小板血漿とは、自分の末梢血(四肢の静脈血)を採取し、その血液をすぐに院内の遠心分離機にかけます。その分離された血液の中の血小板を多く含む血漿を抽出し、自分の膝関節内にエコー下に注入するという治療法です。
この一連の治療は1時間程度で行うことが出来て時間的拘束も少ないです。尚、これは自由診療であり、おおよそ30万円前後の金額がかかる予定です。

PRP、多血小板血漿の役割ですが、この血小板には
1)抗炎症作用
2)膝関節内の損傷を受けた組織の自己修復を促進する作用
さらに、関節軟骨を破壊する物質を軽減させ膝関節の変形の進行を予防する作用があります。
そのため、PRP療法に適した人というのは、膝痛の原因が炎症であること、つまり膝が腫れて痛がっている人になります。また、修復可能な初期の変形性膝関節症患者の方にも適した治療法となります。

従来、運動療法や投薬、ヒアルロン酸注射などの保存療法で効果のない患者さんには手術を勧めていましたが、このPRPという再生医療を行うことによって、保存療法と手術療法の間を埋めてくれる新たな治療法が出現しました。
従来の治療法では膝の痛みが改善せず、手術はちょっと怖いな、受けたくないと悩まれている方がご試聴の方の中でいらっしゃいましたら是非ご検討下さい。

詳しくはYouTube動画をご覧ください

【第41回】変形性膝関節症の原因と痛みを取る方法
講師:医誠会病院 整形外科 部長 福田 宏成 医師

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