【第34回】認知症予防シリーズ④「単なるもの忘れ?」 or 「認知症?」 早期に見分けてしっかり予防

【第34回】認知症予防シリーズ④「単なるもの忘れ?」 or 「認知症?」 早期に見分けてしっかり予防

1. 認知症の症状

認知症の症状全体は、大きく2つに分類できます。
そのひとつが、「中核症状」といわれる、認知症の中心となる症状です。
一番重要なのは「記憶障害」で、認知症になりはじめのころからみられます。
つぎの、「見当識障害」も非常に重要で、時間のながれの感覚がなくなり、今がいつなのか理解できないといいます。
自分いるところが何処なのか見当がつかず、人と自分との関係も分からなくなります。
こうなってくると、理解力や判断力が低下し、ものごとをする能力も低下し、日常の生活は難しくなります。

もう一つのグループは、「周辺症状」といわれ、周囲の人を驚かせるような 「異常な行動や心理症状」です。 人によって出たり、出なかったりしますし、内容もいろいろです。

2. 認知症と記憶障害 もの忘れと認知症

では、認知症で一番重要な「記憶障害」について、お話させていただきます。 まず、最初に区別してほしいのが、あまり心配のない「単なるもの忘れ」と、「要注意の記憶障害」の違いです。

見分け方のポイントは、「単なるもの忘れ」では、憶えている人物や物について、「その名前が出てこない」ということです。
誰かが名前をいってくれたりすると 「そう、その人、その人」という風にすぐに思い出します。いわゆる「ど忘れ」です。
これは若い頃から見られ、年をとると多少は増えると思います。

もう一つ、「要注意の記憶障害」は、これとは違って、実際に体験したり、見聞きしたことを、「憶えていない」のが原因です。
実際には、「忘れた」というよりは、「もともと憶えていない」のです。そのため、いくら努力しても「思い出せません」。
これは、若いころにはあまりなく、高齢になってからみられはじめ、認知症かどうか要注意です。

3. 認知症の検査、診断

気になる症状のあるとき、認知症かどうかを調べるための検査があります。
検査は、記憶や見当識、計算、理解力などの「脳のはたらき」をチェックする「高次脳機能検査」と、 脳の委縮の有無など、「脳のかたち」をチェックする「脳画像検査」という2つの方向から進めます。

4. 軽度認知障害(MCI)

「軽度認知障害」は、認知症と異なり、日常生活には大きな支障がなく、基本的に自立しているものです。
しかし、そのまま放置すると認知症になることが多く、予備軍とも考えられ、急いで予防を始めることがすすめられます。

5. 認知症の予防

こちらは認知症の発症と関係が証明された「危険因子」をまとめたものです。
(1)運動不足
(2)糖尿病、高血圧、肥満などいわゆる生活習慣病
(3)社会的孤立、抑うつ、睡眠障害など、精神・心理的なもの
が挙げられます。その他、喫煙、難聴などがありますが、ここで分かることは、このような因子はほとんどがいわゆる生活習慣に関わるものだということです。 私たちが努力すれば、対応可能なものです。

6. 認知症とフレイルの関係

「フレイル」とは、簡単にいうと「年とともに、心身の活力が低下した状態であり、要介護になる手前の段階」とのことです。
高齢になると身体のいろいろの部分で機能低下がおこるわけですが、最近ではこれをより広い視野から総合的に考えることが重要と考えられるようになり、「フレイル」という考えが出てきたものです。

「フレイル」は身体的、精神・心理的、ならびに社会的フレイルの3要素から構成されており、「身体的フレイル」とは筋肉の減少と筋力の低下があり、転倒しやすく、歩行は緩徐ないし困難となり、また骨折しやすく種々の病気への抵抗力も低下することをさします。

「精神心理的フレイル」とは、年とともに記憶や認知機能が低下し、気分的にもうつとなって活気が低下し、夜よく眠れない、などの厄介な状態です。

「社会的フレイル」とは、他の2つとはニュアンスが違い、周辺の生活環境の悪化であり、高齢になり人との交流が減り、社会的に孤立しやすく、家族や知人との死別も増え、独居生活になったり、経済的に困窮することなどをさします。
これら3つの要素が互いに悪影響を及ぼしつつ状況を悪化させるといいます。

「認知症」というのは、このうち「精神・心理的フレイル」の一部にあたるわけですが、皆様、お気づきのとおり、実は、身体的ならびに社会的フレイルに含まれている要因は、認知症の危険因子です。

認知機能低下の要因とフレイルになる要因とはほとんどが重なっています。
例えば、筋力低下があり、転倒、骨折して手術になったりするとそのまま認知症になることもよくあります。
これらを含め、認知症の予防は、より大きな範囲で「フレイルの予防」として捉えていくのが理に適っていると思います。

7. 最近の「老化防止」の科学

最後に「老化防止」の研究についてお話したいと思います。
この方面の研究は20年ほど前に長寿遺伝子サーチュインが発見されたことから活発になってきました。
現在は3大長寿遺伝子としてサーチュインや、エムトア、AMPKが知られています。
長寿遺伝子とは、「長寿のひとにあるもの」というもので年をとることはなく「誰もが持っている」が、これらが上手く働くことにより、体の老化を遅らせ、健康長寿につながるものと考えられています。

詳しくはYouTube動画をご覧ください

【第34回】認知症予防シリーズ④「単なるもの忘れ?」 or 「認知症?」 早期に見分けてしっかり予防講師:医療法人医誠会特別顧問・ 医誠会病院名誉院長 吉峰 俊樹 医師

オンライン公開医学講座の情報はホロニクスアプリでご覧になれます App Store Google Play